日本のシャーロック・ホームズ本(小説)

シャーロック・ホームズ

シャーロック・ホームズ翻訳の歴史(黎明期~)

ホームズ物語の日本での翻訳は意外に早く、明治27年(1894年)に雑誌の「日本人」1月号に、『唇の捩れた男』が「乞食道楽」として掲載されています。ホームズ物語の第1作『緋色の研究』がイギリスで発表されたのが1887年ですので、わずか7年ほどでホームズの日本語訳が登場していることになります。しかも確認できる最古の翻訳というだけですので、もしかしたら、もっと前に違う話が翻訳されている可能性もあります。

その後もさまざまな翻訳者によって断続的にホームズ物語が紹介されましたが、正典(コナン・ドイル作のホームズ小説60編)すべてがまとまって世に出たのは、昭和6年(1931年)から昭和8年にかけて刊行された「世界文学全集・ドイル全集」(改造社)が最初でした。ただし翻訳は延原謙、横溝正史、妹尾アキ夫らが分担していますので、私は読んだことありませんが、おそらく翻訳者ごとにテイスト違っているでしょう(それはそれで楽しそうですが)。

 

延原謙による日本初のシャーロック・ホームズ個人全訳

日本初のシャーロック・ホームズ個人全訳全集は、昭和26~27年に刊行された月曜書房版(絶版)にです。翻訳者の延原謙は日本のホームズ愛好家で知らない人はいないというくらい有名な翻訳家です。延原は大正期から単発的にホームズの翻訳を行い、月曜書房版に続けて昭和28~30年には新潮文庫版全集でも個人全訳を行っています。この新潮文庫版全集は、改訂版にはなりますが、今でも読むことができます。私が小学6年生の時にはじめて読んだ『シャーロック・ホームズの冒険』も新潮文庫版です。

 

シャーロック・ホームズ小説の出版社

日本では現在、光文社、ちくま書房、ハヤカワ書房、東京創元社、新潮社、河出書房新社の全集が書店で購入できます。それぞれ特徴がありますが、私は新潮社と河出書房新社のものしか読んでいませんので、各社の全集がどんな特徴があるか気になる方は以下のサイトをご参考ください。参考:いま手に入る「シャーロック・ホームズ物語」(2008年3月)

私は、最初に読んだ時のインパクトが大きいので、やはり新潮版が一番しっくりきます。装丁がかっこよく見えますし、その古風な文体・単語にヴィクトリア朝時代のロンドンを感じることができます。著者コナン・ドイルの文章自体がいい意味でまじめ・固いため、文学的なわかりにくい表現は少なく、それでいて情景描写がとても詳細なため、古風な文体にもかかわらずその情景を簡単にイメージすることができます。

私は新潮文庫版へのバイアスがかかっていますので、新潮文庫版をおすすめしたいですが、最初に読む全集は、その先のあらゆるホームズ物語の基準になりますので、これから全集を読んでみようと思っている方は、まずどこの全集にするかたっぷり悩んでください(笑)

どの全集もその翻訳者の風味があって、きっと楽しめると思います。挿絵があったり、全体の約三分の一が注釈・解説(わくわくしますね!)になっていたりする全集もあります。

新潮文庫版を愛している私ですが、公平を期すために一言だけ付け加えます。シャーロック・ホームズ翻訳の大きな流れとして、1980~90年代にそれまでのホームズ研究の成果を取り入れた〝正確な翻訳〟というのが優先された時代があり、2000年代からは読み物として〝おもしろいか〟に重点を置くようになったというものがあります。たしかに、手元ある新潮文庫版と河出書房新社版を比べるとよくわかりますが、後者の方が読みやすいですし、使われている単語もだいぶ変わっています。

また一般に、あとから翻訳したものの方が、前のものを参考にできるのと、その時代の言葉を取り入れることができるという理由で優れているという考え方もあります。このように書くと、これから全集を、と考えている方は新潮文庫版を候補から外してしまうかもしれません。しかしほかの全集に劣るということは決してありませんので、少なくとも候補から外さないでいただければと思います。

確実に言えるのは、どの全集を選んだとしてもホームズ物語の魅力が減じるということはありませんので、その点はご安心ください。このブログで取り上げる正典は、基本的には新潮文庫版の全集となりますので、名称もそれに準じたものを使用します

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